議案第62号の反対討論
議案第62号の反対討論葵政友会 野村まこと(眞実) 本定例会に上程されている議案第62号『市街化調整区域に係る開発行為の許可基準に関する条例』の改正について、意を同じくする議員諸兄の代弁の意も込めて、反対の立場でただ今から討論を行います。 市街化調整区域に係る開発行為の許可基準に関する条例の改正案の要旨は、これまで住居系の開発に限っていた制限を外して小規模の店舗や事務所の建築を可能とし、かつ自己用を外すことにより不動産業等の開発業者による宅地分譲を可能とし、更には開発の規模をこれまでの1000uから50,000uまで緩和し秩序ある開発を誘導しようとするものとのことでありますが、市の重要施策である中心市街地の活性化どころか郊外への開発を一層助長するものであります。 現行条例を改正するには、水戸市の将来の展望を踏まえた都市計画の観点での整理や、次のような 未解決の問題があり、それらの解決なくしては時期尚早と判断し反対せざるを得ないのであります。 @ 水戸市は、道路、上下水道、学校、公民館などのインフラ整備が整いつつある、市街化区域や周辺部の集落での宅地率が極めて低く、未利用地や空き家が多く存在しているのが現状であります。そのような中での調整区域への大規模な分譲住宅の誘導につながる改正は、効率的な都市の発展を阻害する要因になりかねないのであります。執行部では我々が議員提案で平成16年に制定した文言指定による当初の条例を1年後の平成17年7月にエリアとして図上で示す改正をしたのでありますが、その際に70mで40戸連たんという規制を外した新たな区域を開発が可能となるよう拡大し、併せて排水路の設置要件や接道要件を大幅に緩和したのでありますが、そのことが結果として無秩序な開発を誘発することにつながってしまった分けであります。もし区域の拡大を行うのであれば、むしろ山根や国田、柳河、飯富、大野、大場、下入野、等々の既存の集落の中で、連たん等の諸条件を満たしている区域での開発を可能とし 空き教室等の余裕スペースの多い学校や公民館の活用へ向けた政策誘導を行うべきであったと考える 分けで、今後の検討を期待するところであります。 A 人口減少社会における高齢少子核家族化等の社会構造の変化や大規模な宅地造成がもたらす住民の年齢構成の将来的な片寄り現象など、これまでの都市構造上の危険性についての考察がなされてないことの問題です。大規模な住宅団地の誘導につながる今回の改正は、右肩上がりの時代の発想であり、マクロ的な視点を欠いたままでの改正と指摘せざるを得ないのであります。 B 今求められているのは世代間のバランスのとれたコミュニティーによる持続可能な都市形成であり、そのための開発誘導を行うとすれば、地球環境を配慮した緑地等の自然に親しめる空間を織り交ぜ塀を生け垣に規制しリサイクルを推進するエコ団地の誘導へ向けた地区計画を策定するなど、むしろ抑制的な視点での開発が望ましく、それなら理解出来るのであります。また、人口の流入を期待する為には、宅地開発だけではなく、就労・雇用の環境整備が不可欠である分けですが、明解な方向性が未だ見えてきて いない中での開発誘導は問題であります。 C 今回の改正により民間活力による経済波及効果を期待しているとしても、これまでの開発面積の上限1000uを5ヘクタールに引き上げることは、大型の開発業者とその関係者のみが利益を得やすくなる分けで、供給過多とも言われている中ではこれまでコミュニティーを支えてきた地元の工務店や不動産業者など中小事業者の開発による民間活用の可能性はむしろ阻害されかねない分けなのです。つくば市は 同様の条例の施行に当たり3000uを超える分譲を規制し、40%以上の宅地率のある地区に指定エリアを限定するなど、秩序ある開発を行っています。 これらの理由から、運用基準で開発の規模を小規模に制限するなどの補完策がないままでの今回の 改正は問題視せざるを得ず、このままでは賛同することが出来ないのであります。 D 民間の開発業者による調整池や排水路等の都市施設の整備と固定資産税の増収というメリットが 強調されておりますが、結果として開発の影響からくる新たな道路改良や河川改修など公共投資は避けられず、その財源の見込みや対策等しっかりとした影響調査がなされていないことも問題であります。 このままでの開発の誘導は、結果として市街化区域内に税源を大きく依存することとなり、不公平感や不信感が否めないのが実情であります。 E 県や水戸市の出資団体の抱える未分譲保有地への影響、さらには下水道の受益者負担金の徴収等でイニシャルコストの改修を図らなければならない状況の中で、起債残高が1000億円を超えるという 厳しい財政事情下にある本市の下水道事業への影響等、本市の将来の財政計画への悪影響等についての考察がなされず整理されていないままでの改正は市民に理解を得られるものではないと考えます。 F 今回の改正は民間活力によって一団の土地を開発し、良好な住環境を整備することにあるとしておりますが、旗竿敷地の延長により接道義務を満たし自己用建築物を開発するといった今正に問題視されている、所謂無秩序な開発は引き続き許されてしまうものであり、これまでの運用の反省が改められる改正にはなっていないのであります。 G パブリックコメントにおける説明の中で『店舗等は申請が少なかったから自己用をはずす必要がある』と自己用を外す理由を市民の需要が少ないことを論拠としておりますが、一方では『この条例に基づく 住宅建設は需要がある』と市民の需要が多いと答弁しているのです。もし、市民の需要を論拠にするなら住宅系については市民の需要が少なくない分けですから、これまでの条例で充分なはずであり、今回の改正は必要がないことにもなり、矛盾しているのではないでしょうか。 H 平成17年7月の改正時のパブリックコメントにおける『自己用を外して分譲を可能とする』意見についての市の考え方とする回答は『都市計画法の主旨を論拠に「分譲住宅の開発行為はこの主旨に反する ものと考えております。」というように根底から分譲を否定していた』のです。改正時から僅か3年しか経てないにも係わらず、今回は分譲を誘導すると180度違う見解を示しており、改正理由が不可解である上に、本市の都市構造に大きく影響する条例の改正にも係わらず、パブリックコメントの意見の取りまとめも公表もされてない段階で議案として上程するものであり、周知期間もなくわずか1週間後の7月1日には施行しようとしており、明らかに拙速であります。到底、説明責任を果たしているとは言い難いのであります。 I 今回の改正により、中止となったメガモール計画跡地の一部への大規模な宅地化が促進され、その結果として残地での新たな商業系の大規模な開発計画が浮上してくるという可能性が懸念されておりますが、H17年7に開発可能な区域に指定してきて今回は分譲住宅を誘導促進するのが市の方針であれば、逆川沿岸の部分を親水性のある緑地として保全するよう位置付けた地区計画を指定するなど対応すべきと申し上げてきたのでありますが、見解を示そうとしない以上は、商業系の開発に繋がるという可能性を払拭できないのであります。 今必要なのは、時代認識の転換であります。右肩上がりの時代から、人口減少の超少子高齢社会へと変化していることは、動かしようのない事実です。その事実をしっかりと捉えながら、都市経営を考え直し、将来の都市像を描き直すことが最も求められていることなのです。まずは正面からその議論を行うべきであり、今回の改正はそのあとの議論です。拙速な改正は将来に禍根を残します。 市長の街づくりへの情熱をもとに今後、市幹部と市職職が一丸となって『諸課題を整理され正しい手続きのもとでの落ちついた議論を行い』水戸市の将来の都市像が確固たるものとなるよう取り組んで頂くことを強く求めるとともに、加藤市長の英断を期待し以上で反対討論を終わります。 議員諸兄におかれましては、これまで申し上げて参りました主旨をご理解頂き、ご賛同を賜りますよう お願い申し上げます。 長時間のご清聴ありがとうございました。